ハロゲンの酸化数
受験の化学などで大活躍?する 酸化数 という概念
確かにこれを使うと酸化還元反応を統一的に理解できて便利なのだが
実際にはかなりおおざっぱな概念だったりする。
簡単に言えば すべての化学結合をイオン結合とみなしたときに
ある元素の原子が化合物の中で失っている電子の数 である。
だから単体の場合は 0 であり
化合物の場合 共有結合に使われている電子は
電気陰性度の大きいほうの元素の原子が全部持っていったと考える
電気陰性度は F=4.0 O=3.5 Cl=3.0 であるが
実はこの値も根拠がある数字ではなくてポーリングが勝手につけた数値だ
そうすると 2フッ化酸素 の場合 価電子はすべてフッ素のものなので
酸素の酸化数は +2 フッ素の酸化数は -1
1酸化2塩素 の場合 価電子はすべて酸素のものなので
酸素の酸化数は -2 塩素の酸化数は +1
酸素の電気陰性度は全元素中 フッ素 についで2番目なので
酸素は化合物中で酸化数-2 と高校の教科書には書いてある
ところが 酸素と酸素で共有結合する場合があり 過酸化水素 での酸素の酸化数は-1
結構ややこしいことになっている
塩素もフッ素と酸素以外の元素と化合すれば-1 単体は0 で良さそうだが
次亜塩素酸では+1 亜塩素酸では+3 塩素酸では+5 過塩素酸では+7となって大変ややこしい
ハロゲンの場合価電子が7だから 全部失えば+7 1つもらえば-1
最低で-1 最高で+7 の酸化数をとることになる
塩素の場合 フッ素と酸素以外なら-1になるものの
酸素酸の種類が多く そのイオンや塩の種類が多いだけになかなかやっかいなのだ
ややこしいことはまだある
酸としての強さは 過塩素酸>塩素酸>亜塩素酸>次亜塩素酸 の順だが
酸化力の強さは 過塩素酸<塩素酸<亜塩素酸<次亜塩素酸 の順になる
実際次亜塩素酸ナトリウムはその強い酸化力を利用して漂白剤や殺菌剤に使われる
ところが酸としては弱酸であるために強酸と反応して単体の塩素を発生することがある
まず 次亜塩素酸ナトリウム(弱酸の塩)と塩酸(強酸)が反応して次亜塩素酸(弱酸)が遊離する
この次亜塩素酸(塩素の酸化数+1)は不安定なため還元されて塩素(塩素の酸化数0)を発生する
次亜塩素酸(+1) + 塩酸(-1) → 塩素(0) + 水
金田一少年や名探偵コナンでもこれを利用した殺人があった(同じ日に放映されていたような)
いわゆる 混ぜるな危険 と書かれているやつだ
(はてなキーワード の記述は間違っているので注意 ウィキペディアのほうはたぶん正しい)
塩素の実験室製法としてよくセンター試験などに出題されるのが
二酸化マンガン(+4) + 濃塩酸(-1) → 塩化マンガン(+2) + 塩素(0) + 水
という反応 この反応に限っては二酸化マンガンは触媒ではなく酸化剤として働いていることになる。